ここあん便り

アートスタートの価格(対価)

先日開催した第10回アートスタートフォーラムで、「これまでの鳥取のアートスタート」について皆さんに少しお伝えしました。
その中で普段は触れない、経費のことについても触れさせてもらいました。

鳥取県には、補助金制度(鳥取県次世代鑑賞者育成事業)があり、他県に比べ恵まれていること、しかし補助金+入場料で経費はまかないきれないことなど、実情をお伝えしました。

アートスタートは、夢のある事業です。
なるべくお金の話などしたくはない、そう思っているのです。
けれど、アンケートなどに「チケット代、高い」というご意見があるのも事実です。
子育て支援の観点から言えば、こども向けのイベントは無料が理想ですが、今はまだ道半ばです。
機会があれば運営の実態(お金のハナシ)についてお伝えしたいと考えていました。

例えば、今回県内3会場で実施した012歳のためのベイビーシアターについて考えてみることにしましょう。
必要経費は?
①出演者に係る経費(公演料、旅費、宿泊費、舞台機材運搬費)
②会場経費(会場費、机、椅子、舞台設備借用料など)
③印刷宣伝費(チラシなど印刷費、広告宣伝費)
④運営経費(通信費、会議費、スタッフ交通費、スタッフ人件費、記録費など)

では、これらを全て合わせると、どのくらいになるでしょう?
今回の規模ですと、1公演あたり、ざっと30万といったところでしょうか。
それを単純に定員60名で負担しようとすると、一人あたり5,000円!
親子3人で参加するには15,000円必要となります。
びっくりでしょう〜?

そこで経費の2分の一(上限10万円)を補助金に頼り、参加者からは入場料をいただき、出演者、運営側共に経費をできる限り節約するなど工夫を凝らし取り組みます。
(事業を幾つか連続で実施するのも1公演辺りの経費を安くするためです)
経費①②については規定の額がありますので、経費削減は難しく、③④で節約することになります。
チラシなどのデザインを業者に頼らない、スタッフは無償ボランティアです。
それでも収支にマイナスがでますので、そこはNPOの予算でまかないます。
(NPOも潤沢に資金があるわけではありません。会費や寄付金が頼りです)
恩着せがましいことを言うつもりはないのです。
ただ、アートスタートの価格は決して高くなく、安すぎるくらいの価格だということをご理解頂きたいです。

このように言う私も、活動に関わることなく暮らしていたら、ものの値段の見方、感じ方は異なっていただろうと思います。

長年続けてきたアートスタート事業を断念する幼稚園、保育園があります。
子どもたちには見せてやりたいんですが、観劇に使うお金が高いという意見が保護者から出され…、別なことに使って欲しいと言われるのだそうです。
先生のお気持ち、そして生の舞台を楽しむ機会を失う子どもたちのことを思い切なくなります。

ものの値段をみるとき、自分の目の前にやって来るまでに、どれだけの人の手を経てきたのか、それまでの道のりに思いを馳せ想像することを忘れないでいようと思います。
その上で、対価が正当であるかを判断できる大人でいるようにしたいものですね。