ここあん便り

子どもの時間

二十年前、近所に住む息子より一つ年上のY君が放った言葉を今も度々思い出す。
その頃私たちは団地に住んでいた。隣近所に同じ年頃の子どもがたくさんいて、日常的に互いの家を行き来して遊んでいた。夕方五時がお別れの時間という共通のルールがあり、その時間になると遊び道具を片付けてそれぞれの家へ帰るのだ。
ある時、Y君があと五分で五時と言うときに「あそぼ〜っ!」とやって来た。
「もうお別れの時間になるから、明日また遊ぼうね。」と私が言うと、「え?もう五時になった?」と聞く。「うん、あと少し、五分で五時だよ」と私。
「なんだ、五分もある。じゃあ、五分遊んでいい?」とY君。そして息子と二人、ブロックを出して五分遊び、五時になると片付けをして「面白かった。じゃあまたね。」って走って帰っていった。 
この出来事は私自身の「子どもの時間」を思い起こさせた。大人よりずっとゆるやかに流れた宝物の時間を。
今、私は夏休みの子どもらを羨ましく思いながら大人の時間を生きている。