ここあん便り

おひざのうえ

我が子を、おひざのうえに抱きかかえていた時間は一体どのくらいであっただろうか。
二人の息子たち、それぞれに、結構大きくなってからも、私のおひざを求めてくれたことが、
今となっては懐かしい。
昨日、仕事で訪れた保育園で、お母さんのおひざに抱かれ、
とろけんばかりの顔の子どもたちを幾人も目にした。
今、この子たちは、この幸せを最も求めているのだなあと、
切ないような思いでその姿を見ていた。

ふと、幼かった頃の長男の声が耳の奥に響いた。
「ヒロ君ばっかり・・・、トモ君もね、トモ君も抱っこしてもらう。」
(3つ違いの弟のことを抱いている私に向かい)
「今日ねえ、ヒロ君と何したの?」
(幼稚園に行っている間、何をしていたのかと問う)
4歳の、可愛らしく高い声がはっきりと蘇ってきた。
次男が生まれたこともあって、年少から幼稚園に通わせてみたけれど、
よく病気もして、結局半分も行ったかしら・・・。
当時は核家族で暮らしており、お友達を求める気持ち(外へ向かう気持ち)と、
甘えたい気持ちとが行ったり来たりする、そんな年頃の息子に、
我慢させることも多かったのかも知れない。
耳の奥に、今も響くこの声は、その声の主にちょっぴり申し訳ない気持ちとともに、
何よりも求められていた頃の自分を改めて思い出させてくれた。

おかしなことに、次男の4,5歳の頃の声を思い出そうとしても、何故だか思い出せない。
困ったな、なんとか思い出したいと思う。