ここあん便り

遊びに寄り添う

「子どもとの遊びに困る」
「自宅でどう過ごしたらよいか分からない」
子育て中の皆さんから、こういった声をきく。

おもちゃ屋なので、「ここあんのおもちゃでお悩み解決!」と、言えれば良いのだけど、残念ながら、ここあんにあるおもちゃを揃えたとしても、問題の解決にはならない。

おもちゃを与えさえすれば子どもが勝手に遊んでくれる、といったタイプのおもちゃではないので、時に遊び手(使い手)を選ぶ。
「どうやるの?」
「おもしろくない」
急いで結果を求めたがったり、考える前に諦めてしまう傾向があるお子さんにとって、おもちゃはただのインテリア。
動画を見る時間が多く、自分自身で遊びを見つける経験や試行錯誤を繰り返す遊びをしてこなかったのかな?と心配になる。

おもちゃ屋が言うことでもないけど、「おもちゃはなくても子は育つ」。
絵本だって、同じ。
(これは極論。)

そもそも「遊びとは何か」、それを先ず考える必要がありそうですね。
もし皆さんが、子どもと遊ぶこと、子どもを満足させることが親の役目だと思っているとしたら、そう思わせてしまった社会の一員として、私も反省しなくては。

確かに、小さいときは大人が遊んでやる必要がある。
遊んでやる、というか、サポートすれば良いのだ。
しかしこれが案外難しい。
主役は子どもなのだけど、遊んでやっているつもりがいつの間にか大人がリードしてしまったり、主役を置き去りにしてはいないだろうか?
「ちがうよ、こうだよ」(遊びに正解はないのに間違いだと指摘)
「こうしたら良いんじゃない」(主役の試行錯誤する機会を奪う)
これでは楽しくないね。

参考までに、3歳の孫との遊びを紹介するね。


広告や新聞は室内遊びに必須の道具。
(広告で作ったマント、朝からずっとつけたまま一日過ごした)


「バアバ、お弁当(広告の)切って!」
しばし、お弁当屋さんごっこ。

広告は多種多様。
大好きな車の広告、身近なお野菜や果物など食材の広告、おもちゃ屋さんの広告などあれば最高。
文字や数字に興味を持ち始める年頃の子どもなら、知っている文字、数字を見つけっこするのも楽しい。


広告遊びで一番盛り上がった(満足した)のは、こちら↑を使った「消防車ごっこ」。

小さい人は何故か棒が好き。
孫にせがまれて広告を細長く丸めて棒を作るのだが、これがいつもケンカの元になる。
棒を持てば振り回したくなり、戦いごっこになり、親たちにダメと言われても結局大騒ぎして、誰かが痛い目にあって叱られる…。

なので、バアバは棒を作ったら、剣以外の素敵なモノになることを企む。

この日は、孫とあれこれ会話しているうちに「ここから、お水が出るよ!」のひと言をキャッチ!
「それは良いね!お水、だそうか〜」
で、ビニールひもを先につけて「火事だ〜」「それ!出動だ!」消防車ごっこ。
(因みにビニールひもを孫は自主的に細かく裂いた)

家中を火消しに走り回り、大忙し。
(わが家は3階建てなので、上がったり下りたり、各部屋回るだけで大仕事)
ひとしきり駈けまわって疲れたら、「消防車の出てくる絵本読もうか?」と誘ってみる。
「消防自動車じぷた」を読み(3回も)
他にもあるかな、と本棚を探し、「くんくんとかじ」を読み(これも3回)
消防車ごっこは終わった。
絵本を読むとき、孫は自分の消火ホースで、じぶたやくんくんと一緒に消火活動を続けた。
その表情を見ながら、大好きな消防車と絵本の中のストーリーと、家中走り回った消防活動とが彼の心の中で一体化し、広がっているように感じた。

やれやれ、楽しかった〜
消火ホースを作ったとき、消防さんの帽子やコートを新聞で作ってみると楽しいかも、
と一瞬思ったが、3歳の孫を見ていたら、そんなもの要らないことが分かった。
広告を丸めた棒さえ持てば、後は全て彼の空想の世界に揃っているんだ。
自分が消防車であり、消防士さんであり、全てなんだと思った。
家中の火事を消し回って、大満足。
スッキリした顔で「もう、お腹、ぺっこぺこ!」という孫とお昼ごはんの用意をして食べた。

午後にはここあんへ移動し、ここあんのおもちゃで遊んだ。
最近のお気に入りは、ミッキー社の汽車セットとビー玉転がし(組み立てクーゲルバーン)。
これを合体させて遊ぶと言う。
本人のやりたいように、思い描くことを、少し手伝う。
思うように行かないことの方が多い。
だからといって、大人の思う正解は示さない。
「あ〜、こわれちゃった」
失敗を「あれれ?」「あはは!」と笑って楽しむ。

心から満足できる遊び体験があると、その後、少々つまづいてもへこたれない。
片付けが出来なかったり、いつまでも遊び続けたがる時は、満足感が足りないのかも知れない。

一日のうちで、何かひとつ、楽しかった〜、やりきった〜、そんな満足感を、遊びの中で積み重ねること。
それが、子どもたちには必要だと思う。

広告の棒、剣以外の楽しみ方として、釣りごっこもオススメ。
年長さんくらいになると、お魚(厚紙に絵を描いて切る)も各種作れるので、時間をかけて遊べるよ。