ここあん便り

アートスタートへの思い(執念?)

補助事業の相談会でのこと、会の終わりに挨拶をしようとすると、行政職員の一人が「わたなべさん、久しぶりにお会いしましたけど、変わらぬ(20年前?)熱意が伝わりました」と慰め的発言を。
(相談内容が補助事業にはならないという残念な話し合いだったので)
20年前の私を覚えているらしいその方は、「あの頃からアートスタートのことおっしゃっていましたね」と。

およそ20年前、鳥取県文化振興財団(今は公益財団)の理事をしていた頃のことだろう。
すっかり忘れていた。
怖い物知らずで、言いたいことを言えたワタシを、すっかりしょぼくれたワタシが思い出す。
あの頃は、毎月のように鳥取へ(山陰道が整う前)通っていた。
県庁へ、時に県議さんにも話しをしに度々出かけた。

「アートスタート」の必要性を訴え続け、理解されずに悔し涙。
日本語の筈だけど、言葉が通じない?
悪戦苦闘のさなか、ひょんなことから知事のひと言で「アートスタート」事業に取り組む機会を得た。
その後も色々あったけど、「アートスタート」を地域で取り組むための補助金制度(鳥取県)が整ったのだから、まあよし。

そもそも、乳幼児、とりわけ0~3歳をも含めた芸術文化政策に取り組むなど、当時の担当課は想像もしていなかっただろう、だから取り組むことになった担当者は私たち以上に苦しんだかも知れない。
これは今になって(当時はこっちも必死だったから)思うこと。
「そもそも、3歳児にアートが分かるのか?」
今では考えられないような台詞も、当時の一般的認識として発せられ、それを撤回させたい一心で、乳幼児がアートをどう捉えているのか、乳幼児期にアートに触れることの意味は何か、そもそもアートとは?…を必死で探し求めた。

真正面から当たって砕けて、ベソかいてたら、泣きつく相手を教えてもらい、思いの丈を吐き出すと、聞く耳と動き方を心得てるその方達は、行政と渡り合うための手法を教えてくれた。

立ち上げて間もないNPOだったから、知名度や実績などあるわけもなく、どこへ行っても「だれ?」「何者?」といった反応だったのも仕方ないが、だからこそ、言いたいことを言えたのかも知れない。
そして何より、信念を持って市民活動を続けて来た先輩方の「あなたは間違っていない」という大きな信頼感に支えられ、絶対的安心感とともに突き進めたことが有り難かった。

さて、紆余曲折ありつつ、我々がアートスタート事業に取り組んでから今年で25年目を迎える。
「3歳児にアートが分かるのか」なんて誰が言った?
今や、0歳~2歳を対象とした「ベイビーシアター」が求められる世の中になった。


10年前にアートスタートフォーラムに合わせて上演した「かぜのうた」
リニューアルした「鳥の劇場」で上演される

25年。時は流れた。
そこで、改めて考える。
私が願い続けた「アートスタート」の普及は叶ったのかと。
25年の歳月は、アートスタートを取り巻く状況を大きく変えた。
そろそろ次のステージへ向かう必要がありそうだ。

続きは、また。