ここあん便り

自分になる

子どもがいて、劇場という組織にであったからこそ私は自分になれたかな〜って思う。
一人の人に出会うと、その人をもっと知りたくなる。
きっと今、劇場の若い人たちは、永野むつみさんをもっと知りたい!って思っていることだろう。
そして、永野さんの講演に出てきたロシア文学のことだとか、人形劇の師匠のことだとか、調べてみようなんて思っているかも知れないね。
ふと我が身を振り返る。すぐさま浮かぶのは、鳥山敏子さんのこと。
35歳の時だった。講演会にお招きして、やはり数日同行させてもらい、私自身大きく影響された。
その後もお招きする機会や近隣での講演会などでお会いすることがあり、彼女の著書を片っ端から読み、深く学ばせてもらった。
彼女のようになりたいという願いの中で、彼女に学ばせてもらいつつ、やがて私は私にできうる自分の道をみつけなければと思うようになった。自分をちゃんと生きていくこと、それができてはじめて彼女と真に向き合えるんだって。きっとしばらくの間、鳥山病に罹っていたんだね。
今も時折思い出す、どうしていらっしゃるかしらと。
「全国に賢治の学校をつくろう」と熱く訴え続けておられた鳥山さんは、やはり本物だったんだなあ。
賢治の学校は、各地に彼女の思いを共通の思いとして受け継ぐ人たちの手で広がっている。
今私は、出会った頃の彼女の年令になっている。そう考えると、彼女のように思いを実現できる人に、これからだってなれるんだよね。

豊かな出会い、その多くが劇場の活動を通じてもたらされたことに、改めて感謝しよう。
そうして出会った方たちに刺激され、考え、学び、私はやっと自分になった。
そして、これからも、他の誰でもない自分になっていきたいと思う。