ここあん便り

子どもとメディア、きりなし話。

子ども支援のNPO、こども未来ネットワークを立ち上げて20年。
設立当初からの大切な事業が「メディアスタート事業」。
子どもたちの体験不足、その要因はメディアにあるのでは?と、保護者対象に、メディアとの付き合い方を見直しましょうと呼びかける啓発事業だ。

当時は、子どものテレビ、ビデオ、ゲームの長時間利用を少しでも減らすようにと、テレビカバーを作り画面にかぶせる「ノーテレビデー」を県内各地に広めるべく走り回っていた。

NPO設立数年前から福岡のNPO、子どもとメディアに教えを請い、私たち自身が学ぶところから始めた取り組み。
ある冬には、予定していた研修会当日、講師が雪で足止め(JR伯備線)、私たちも凍り付いた道路が恐ろしすぎて米子から帰るのを諦めて一泊したことがあった。
学ぶことに必死だったんだね、今のようにオンラインはなかったしなあ〜。
その後、師匠から「もう、自分たちで講演できるでしょう?私たちは行きませんよ」と厳しい愛情で突き放され、やむなく自分たちが講師となって啓発事業を始めたのだった。


さて、あれから20年…。
テレビやゲームの使用時間などより、携帯電話などデジタルメディアとネットの普及の凄まじさは予想を大きく超えた。
私たちの啓発事業も「ネットから子どもたちを守る」的な内容に変化し、パーソナルメディアを幼い子どもに「持たせない、使わせない」というかけ声には賛否両論、さまよえる親たちに「上手につきあっていきましょう」と言い続けた。
右往左往する親たちを尻目に、子どもらは、プロフから、カカオトーク、LINE、ティックトック、インスタ等々使いこなし、大人の知らぬところで事件に巻き込まれる事例が後を絶たなかった。
痛い目に遭う子どもたちを犠牲にしつつ、ネット社会は徐々に子どもが使うことを前提に変わり始めた。
子ども専用アプリが登場し、フィルタリング、ペアレンタルコントロールの設定など、使用に際しての保護者の管理責任が明確にされた。
今、0.1.2歳の赤ちゃん期からデジタルメディアに親しむ家庭もあり、幼児期からネットメディアを楽しんで育った子どもたちのなりたい職業№1は「YouTuber」だと言う。
誰もが「スマホ無しには生活できない」ばかりでなく、バーチャルな世界を、リアルではできない体験、交流のできるもう一つの生活空間として拡大させ続けている。
この20年、大きく変化したメディア環境のこれからを、もはや私は想像することができない。
一体どんな世界が待ち受けているのだろうか。

けれど一つ、はっきり分かっていることがある。
子どもをめぐるメディアの問題は、子育ての問題に他ならない。
リアルであろうとバーチャルであろうと、やって良いこと悪いことに変わりは無い。
リアルであろうとバーチャルであろうと、子どもを危険から守るのが大人の役割であり、新しいことにトライしようとする子どもに寄り添い、見守る責任があることを、私たち大人は忘れてはならない。