ここあん便り

アートの力

先週末に参加した鎌倉幸子さんの講演会では色々な気づきを与えて貰ったが、その中のひとつを私見を交えて紹介してみようと思う。

内戦で何もかも失いかけたカンボジアの地に飛び込み、学校図書館を作る活動を続けてこられた鎌倉幸子さん。
カンボジアでの活動の様子を写真で紹介して下さった。
その写真の中に、人々が何かを待って群がる様子を撮したものがあった。
群がっている数は尋常ではない。
そしてまた、どことなくみな嬉しそうな顔をしてぎゅうぎゅうで待っているのだ。
スタッフが本の楽しさを伝えるために実演する「読み聞かせや紙芝居」を子どもだけでなく、大人もとても楽しんでくれたそうで、「今度は人形劇でもやってみようか」という話になったその「今度」に押し寄せた群衆の様子が、大勢の人々が群がる写真だった。
「ああ、やっぱりそうか」
驚きつつも私は妙に納得した。
「人形劇」には村じゅうの人を集める力があるんだよね。
アートの力が証明されたように私は感じた。

どんなときでも、いや、失ったものが多いからこそ人々は求めるのではなかろうか。
心の隙間を埋めてくれるもの。
生きる希望につながるもの。
じわじわと、ずしーんと、ふんわりと、何かが魂に触れてくる瞬間を。

あの一枚の写真は、カンボジアの人々が失ったものの大きさを私に教えてくれた。
そして同時に、ものや情報、あらゆるものを持ちすぎている私の現実を残念に思った。
心から、純粋に求めるあの瞳を、私は持ってはいないなあ。

ちょっと足りないくらいの暮らしの中でこそ、本当に求めるもの(感動)と出会えるのかも知れないね。