ここあん便り

わらべうたはアート♪

私とわらべうたとの出会いは、20年ほど前のこと。
市民図書館分館に「子どもセンター」を開いていた時に遡る。
「ブックスタート」赤ちゃんに絵本を!の事業が境港市で始 まった頃のこと、図書館に赤ちゃん絵本は充実してなく、 地域団体による「おはなし会」も赤ちゃんは対象外。
ブックスタート以後、赤ちゃん連れで図書館に来る方は 増えたけど、実際に赤ちゃんと絵本をどう楽しんだらよいか 学んだり、体験できる場がなかった。

そこで、仲間たちと子どもセンターで毎月1回、絵本とわらべうたを 楽しむ会、「子育てサロン」を開くことにした。
当時はまだ、子育て支援センターはなかったし、赤ちゃん 連れで参加できるイベントなどない時代、ある意味画期的な 試みだったのかも。
わらべうた遊びと赤ちゃん絵本を参加者みんなで楽しみ、 お茶を飲みながらお喋りする会は大好評♪わらべうたが赤ちゃんやお母さんの心に安らぎをもたらすことを知った。これは私にとって大きな出来事だった。

「子育てサロン」開催日、市民図書館分館1階の「境港子どもセンター」には、赤ちゃん連れの親子(母子)が続々と集まった。
毎回、10組前後が集まったと記憶している。
参加者みんなで大きな輪になって座り、K子さんのリードでわらべうた遊びを楽しむ。
「♪おてぶしてぶし」で始まり、めのあどあけろ(谷川俊太郎さんの詩(絵本)の一節)を唱え、「♪おはよう、よくきたね」で一人ずつ参加者全員(お子さん)の名前を呼ぶ、シメは「♪さよならあんころもち」というスタイルは、この時はじめたもの。
今も、ここあんや支援センターひまわりで、このスタイルが受け継がれている。

わらべうた遊びを3つか4つ、繰り返し歌って遊び、最後に絵本を3冊読む。
赤ちゃんたちが、わらべうたを繰り返し歌ってもらい、身体に触れてもらい、スタッフや参加者と目を合わせて過ごすうち、落ち着いてくるのが分かる。
わらべうたで遊んでもらって心地よいのだろうと思っていたが、赤ちゃんたちを見ていて気づいた。
遊んでもらっている?そうではなくて、赤ちゃんたちは主体的に、自ら遊ぼうとし、大人や他の赤ちゃんたちに働きかけているいるんだ。
わらべうた、そして絵本を、自分の意思で楽しもうとしているってことを、私は赤ちゃんたちに教えられた。

当時、参加している人みんなで声を揃えて歌う(上手下手関係なく)心地よさ、みんなで一緒に楽しめている雰囲気というのがあって、本当に楽しかった〜♪
今思えば、あれはまさに「アートスタート(ベイビーシアター)」だったな。
30分、小さな人たち、そして親たちの心はわらべうたで満たされていたもの。

さて今、どういうわけか、そこにいるみんなの心をひとつに、ということができない。
コロナ以後、特にそう感じる。
ひまわりでも(ここあんでも)、わらべうたや絵本を最後までみんなで楽しむことは難しい。

ところが先日、奇跡のような時間を久々につくることができた。
わらべうた研修会のみんなと市民図書館内ではじめて実施した「夏のわらべうたを楽しむ会」。
参加している親子は、みんなとても楽しそうで、終わったときの「あれ?もう終わりなの?」って空気感、「まだ遊びたい」って顔の子どもたち、その場を立ち去りがたい雰囲気。
久々に味わう満足感♡で、研修会のみんなも幸せな顔をしていた。

やっぱりわらべうたは良いなあ〜
親子で、それぞれに楽しめるツールではあるけれど、楽しさ、幸せ感は周囲に広がる、そして響き合う(共有)感覚がそこに居る人みんなを包み込んでいく。
それこそが「文化=アート」の生まれる瞬間なのだと実感した。