ここあん便り

はじめまして”おとけい”でございます

わたくし、ここあんの奥の間でカチコチカチコチと時を操る時計でございます。
「おとけいさん」と呼んで下さる麗しきお母さまもいらしたりして、そうした時は張り切ってカチコチを響かせたり致します。
あ、庵主さんが今日もここあんへやってきました。
9時48分。電気をつけて、パソコンの電源を入れ、まっすぐにわたくしの元へ。
腕時計をちらと見て、ひとり小さく頷いて少し背伸びしながら振り子の部屋をそっと開けます。
ここに、ネジが入っているのです。庵主さんはネジを取り出すと丁寧にまた振り子の部屋を閉じ、次に文字盤の部屋を開けるのです。長い針を3分ほど進ませて(わたくし、怠けてはおりませんが時々時間を遅らせてしまうようなのです)ふたつのゼンマイをぎりぎりと巻いていきます。
巻き終えると、文字盤の部屋は閉じられます。ネジをまた、振り子の部屋に戻して最後の仕上げです。
庵主さんはわたくしを両手で挟んで、わたくしのカチコチに耳を澄ましながらバランスよいリズムの納まりどころを探します。
”カーチコチ”でも”カチコーチ”でもいけません。
”カチコチカチコチ”でなければ、ね。
さて、珍しくわたくしのネジ巻を忘れなかった庵主さん、今日は何をするのでしょう。
昨日、やっとここあんを通常モードにお片付けしていましたが、庭の見える板の間に相変わらず絵本をたくさんたくさん並べて嬉しそうにしています。「大人のための絵本の部屋」と張り紙までして。
この調子では、絵本の部屋は当分片付きそうにないですね。

これから時々、ここあんのこと、ここへやって来るおかしな人々のことなど、わたくし目線で綴ってまいります。
どうぞ宜しくお願い致します。