ここあん便り

ありがとう20年

今日はNPOの話しを少し。

2000年秋、鳥取県西部地震の経験が、今のNPO活動に通じている。
地震発生後、被害を受けた鳥取、島根の被災地をプロの表現者たちによるチャリティー公演でまわらせてもらう中、本当に色々な方に出会い、たくさんの気づきをもらった。

震災後緊張し続けていた身体と心がほぐれるのを感じたと話す保育士さん、
生まれて初めて人形劇を観たという小学生、
山間地域で子どもたちに「本物」と出合わせたいと活動する人たち、
廃港間近の木造校舎(避難所)で子どもたちと遊び、「また来るね」と約束したこと、
被災地支援活動に全国の劇場仲間が資金を寄せてくれたこと、
等など、被災地支援と言いながら、私たち自身得るものの多い活動だった。

当時私は、境港親と子どもの劇場の事務局を若い人に渡して、鳥取県内4市それぞれで活動する、おやこ劇場こども劇場の県組織の会長として活動していた。
NPO法が成立し、非営利組織にも法人化の道がもたらされ、NPOを仕事にする時代がいよいよ始まるのだとワクワクしていた頃。

地震前、鳥取県内のおやこ劇場こども劇場は、いずれも法人化の道は選ばず、県組織も積極的に法人化へは向かえずにいたが、1年半をかけ被災地支援活動を続けるなかで、劇場の会員だけでなく、どこに住んでいても、どんな環境にあっても、人形劇を観たり、心弾ませる体験のできる子ども時代を誰もが過ごせるような世の中にしていくこと、それが今、我々がやるべきことだという結論に至った。

そして2002年、特定非営利活動法人こども未来ネットワークを県内で子どもに関わる活動をする人たちと共に設立した。

「アートスタート」という名前で、乳幼児向けの舞台公演を始めたのもこの年。
法人化の認証を受ける前に記念すべき第1回アートスタート公演を実施し、以後現在も変わらず、県内各地でアートスタート事業の実施、サポートを続けている。

「アートスタート」と共に開始したのもう一つの事業、「メディアスタート」については、またの機会に触れることにして、今回は、「アートスタート」に燃えていた頃の資料を紹介しよう。

まずは、「アートスタート宣言」(たぶん、全国初)

新しいことをはじめるのは、いつもワクワクする。
「アートスタート」、「アートスタートフォーラム」と、ずんずん突き進んでいた頃の貴重な資料。
この後、行政に働きかけ、補助金をつくってもらい、更に大きな事業にも向かって行って、アートスタート全国フォーラムまでやり遂げたけれど、その後ちょっとトーンダウン、足踏み状態のアートスタート事業をコロナが直撃、積み上げてきたものは今や存続の危機に瀕している。

そして周りを見れば、県内の劇場(おやこ、こども)は存続を危ぶむ地域もあり、会員確保の苦労は半端ない。

「アートスタート宣言」を読み直してみると、その思いは今も色あせていない。
「アートスタート」を巡る世の中の変化はそれなりにあって、国内で言えば赤ちゃんを対象とした舞台公演「ベイビーシアター」に取り組む創造団体が増え、実施する地域も徐々に増えている。

0〜3歳の小さな人たちに「アート」が分かるのか。
など、活動をはじめた当初は繰り返し問われ続けたのだが、今はどうよ?
0歳からのクラシックコンサート、0歳からのお芝居、0歳からの…が大流行。

しかし、幼稚園、保育園での舞台鑑賞の機会は減っている。
(あくまで実感としてであり、実際に調査しているわけではありません)
これを、このまま見過ごして良いのだろうか。

NPO法人として活動をはじめて20年。
ありがとうの気持ちを、地域にどうお返しするべきかを考えている。

「アートスタート」を、公の事業として定着させることを本気で考えたい。
(我が町、境港ではすでにそれが実現できている)
県内全ての市町村で、それを実現するにはどうしたら良いのだろう。
これまでの成果をまとめ、これから先のあるべき姿を提案するのは「今」だよね。

少し、と言いながら、書き始めるとどんどん話しが広がってしまうね。
今日はひとまず、ここまでにしよう。

読んで下さって、ありがとうね。