八雲国際演劇祭で、人形劇団ひぽぽたあむの「グレイラビット」を観た。
静かに、心の奥底に入ってゆく作品。
グレイラビットは、私の想像していたとおり、
小さくて働き者、けなげだが賢く強い。
あの日から、クルクルとよく動くグレイラビットは、
確実に私の心の住人になった。
ひぽぽたあむの人形劇は、手遣い(人形に手を入れて操作する)人形劇。
客席から見えるのは人が肘から先で操作する小さな人形だけ。
人形に表情があるわけではない。
なのに、生き生きと、心の有り様まで見えてしまうのは何故だろう。
グレイラビットが嬉しくてでんぐり返しする様や、
身体じゅうため息でいっぱいなんだろうねと思わせる重い足取り、
怖ろしさに震える心と身体、
そうした様子を腕一本で表現するひぽぽたあむの人形劇役者たちの確かな
技術と豊かな表現力、そして美しい舞台美術、音楽、きめ細やかな照明・・・
ため息がこぼれる程の心憎い空間に心が満たされる。
小さな人たちの心の中にも、グレイラビットが住み着いたかな。
日常の中でふと立ち止まって考えなきゃならない、そんな時、
グレイラビットならどうするかな?
そんな風に思いを巡らすことができる。
それが物語や芝居の魅力だと私は思っている。
物語の中でであった人々は、その後の人生を共に歩む
心強いパートナーになるのだから。
他者を受け入れる。他者の思いに心を重ねる。
それができるようになるためにも、3歳までの「育ち」は重要。
クレイラビットを観た帰り道、
ここあんの役割というものについて、改めて思いをはせたりなどして・・・。
2014年11月 ここあん便りより